
「きもの学」は、今年で10 回目の節目を迎えます。スタート時は、きものに絞った講座が果たして成り立つものか、当世学生にきもの講座が受け入れられるのか、学生と社会人が机を並べて学ぶ社学共学の反応は――。様々な実験的内容を抱えての不安いっぱいの船出でしたが、講座は初回から〈大学コンソーシアム京都〉講座で受講者数歴代トップとなる人気。会場を東京・早稲田大に移した「きもの学東京」も4 回目となって、いまだに定員を上回る受講申込者が出ている盛況振りです。節目の開講を控えて、「きもの学」を巡るあれこれを振り返ってもらいました。
「えぇ、それなりの実績と経験を積み上げたという面ではここまで順調に発展してきたといえます。延べの受講者数は登録ベースで6万8 千人にもなっています。この数は少なくありませんし、この講座が積み上げてきた財産です。何事でもそうなのでしょうが、初めてのことを実践に移すということでは、不安が先立つものですが、きもの学の場合は、このスタートの不安をものの見事に吹っ切って、無難に乗り越えたのが大きかった。
しかし、10 回目を迎えて新たな課題がでてきています。昨今の社会・経済面での環境変化の影響を受けていますし、基礎となるきものの市場環境ですね、この影響も無視出来ません。それに、10 回目となると、手馴れてきた反面のマンネリの恐れもありますから、ここはスタート時の緊張感を思い出して、もう一段の自己改革に踏み出すときだと考えています。」
最近の傾向で目立つのは、男子学生の受講者が増えていることです。男子学生が急にきもの好きになったとは思えませんから、これはやはり、“単位狙い”だろう、と。それはそれで、割り切って考えられるのですが、もっと深いところで気になる現象も出ています。」
「端的に出ているのが受講率です。大学生の場合、この種の講座の出席率はトータルで60%が目安です。きもの学でもこの範囲に収まっていました。ところが、ここ最近では、ほぼ40%に落ち込んだと見ています。とくに、京都の場合、後半の「発展講座」の出席率が極端に下がってきています。これは、9月の3週間の開講時期は、学生にとっては夏休みをエンジョイする最後の期間ですし、昨今の学生のアルバイト事情も絡んできます。要するに、9 月の3週間の集中講座に時間を当てることがだんだん難しくなってきているのです。東京講座の早稲田大では、授業の間に組み込んで週1 回の開講です。これだと出やすいのですね。「きもの学東京」は2007年スタートで、昨年が4 回目の開講ですが、毎回、申込者が予定数を上回って、受講出来ない学生が出るほどです。京都と東京を同列には考えられませんが、連続受講が最近の学生になじまなくなっている、という昨今の学生事情も考慮に入れるべきでしょうね。それより何より、きものに対する学生の接し方がまるで変わっていることも「きもの学」の受講に大いに関係しています。」
「一言で言えば、いよいよ、きもののことを全く知らない学生が大半を占め、しかも、両親もきもののことをまるで知らない。振袖を着ようと思っても、両親の知識はまるで当てにならないのが現状で、きもののことは、おばぁちゃんにまで遡らないと聞けない。そんな学生に講座への感想を聞くと“日本文化やきものに関して何も知らなかったことに驚いた”と返ってます。そして、“日本文化を表す、きものの存在を知って、自分が日本人であることを実感した”とか“これ(きもの)を守っていかないと日本の文化が滅びてしまう危機を感じる”と書いています。このままの状況を放っておけば5 年後にどのような状況になっているか、同時に、そのような危機的状況を変えるのも、教育次第だと思うのです。「きもの学」では、ここまで延べ5 万人の学生が受講しています。きものを知らない世代に知識の橋渡しをした貢献は少なくないと自負していますが、これからは、京都、東京以外の都市でも「きもの学」を開講して、きものの知識普及をもっと身近なものにしていきたい、そしてきものが持つ奥深い文化性に驚いてもらいたい、と思います。」