
| 第十六回 【きもの教育は発展途上、背景文化も教え込む】 東洋ファッションデザイン専門学校 東洋きもの専門学校 樹下 林子学校長 |
![]() |
戦後まもなく大阪に開校した「東洋服飾専門学校」。ファッションデザイン専門ときものの専門の両校を有する数少ない服飾専門学校として60年の歴史を刻んでいますが、樹下林子・学校長は一貫して和と洋のファッションの融合を使命感として生徒に接しておられます。
当振興会の「きもの学」講師としても登壇いただいていて、「きもの文化検定」にも多数の生徒さんがチャレンジされています。改めて、最近の服飾専門学校経営からみたきものと生徒さんの気質などを伺いました。
ファッションデザインときものの専門学校を並立されている服飾専門学校として貴重な存在ですが、両面から見られたきもの教育の現場はいかがですか。
「もともと本校は、衣服事情が厳しかった戦後間もない頃、手持ちのきもので洋服に仕立て直す方法を知り合いの方に教えていたのが評判を呼んで、専門学校として教え始めたことから始まっています。従って、きものと洋装、そしてそのデザインの教育要素を設立当初から含んでいて、それを今日まで追及してきたということです。ただ、時代の流れがありますから、その後の洋装化の流れの激しさに伴って、どうしてもきものの方が押され気味になったのはある意味で仕方のないことだったと思います。しかし、そうした流れの中でも、きものの専門教育に手を抜くことなく一貫して追求してきた、と自負できるかと思います。最近では、きものの方が生徒数でも安定しています」
きものの復権でしょうか、業界にとっては朗報です。
「洋装のアパレルファッション業界は今大変でしょう。就職活動の大変さがありますから、これまでのように、生徒にとってファッションの夢が安易に結べないという環境にあります。生徒数も一直線に増えた時代から、伸びも止まってきています。それに比べてきものの方は、あまり変動がなく最近では若干上向き気味です。現在の生徒数では拮抗しています。きもの専門学校生へ進む生徒は当然のことながら、きものに対して好印象を持っていて、きものの持つ深い文化性に対する憧れがあると思います。教育面から言っても、これがきものの強みですね」
ファッションデザイン専門学校生ときもの専門学校生の違いといえば。
「普段身につけるファッションやおしゃれと言う面では、両者にあまり差は感じません。ただ、きものの生徒の方が、やはり入学前から何らかの日本の伝統文化に触れている機会が多いと感じます。それは、はっきりとは言えませんが、なんとないところに現れます。品(ひん)とか仕草の端々といったところですが、それは育った家庭環境に多分に影響されると思います。特に顕著なのは、家庭におばぁちゃんが居られるかどうか、ですね。おばぁちゃんが和裁をしておられる姿やゆかたを着ておられる姿を子供のときにみているかどうかで選択の道が大きく変わってくるように思います。それでも、きものに対して好印象をもっているのはファッションもきものコースも共通しています」
最近の生徒さんの気質で感じられるところは。
「時代の流れなのでしょうが“使い捨て文化”に毒されて、すべてで“雑い”印象が拭えません。きものを畳めないのは勿論、一度着たきものは汚れを落としておくことや仕舞うのでもきものの形で仕舞いこむのではなくて、そのままぐっしゃと洋服のように仕舞いこんで平気なのは気になりますね。ことはきものに限ったことではなく、きものを取り巻く背景の文化そのものが崩れかかっているということではないでしょうか。こうしたことをあきらめずにひとつひとつ教え込んでいくのが我々の使命で、きもの教育とは、このような背景文化を含んだ幅広いものだと思います」