リレーインタビュー

第十四回
【愛知の検定成功は既存組織のフル動員に。】
社団法人 日本和裁士会・顧問 牧野 俊一さん
<(社)全日本きもの振興会正会員>

大成功を収めた「きもの文化検定」で、愛知地区の取り組みの力強さが光りました。さらに、全業種・業界を網羅した取り組みで異彩を放ったのは、国家検定などを通じて先進の経験を持つ和裁団体でした。今回のきもの文化検定成功のキーマンのこの人に語っていただきました。

「きもの文化検定」の成功で、愛知県の取り組みが際立っていましたが。

「愛知のきもの関連組織では、和装教育推進会議が機能していました。県下の中学に和装教育を普及していくための組織ですが、ここには、名古屋織物卸商業組合、小売商の3団体やきもの着付け教室の6流派の先生方、それにわれわれ和裁の組合、さらには有松・鳴海の絞り組合、名古屋友禅の染色3団体などすべての関連組織が網羅されています。今回の検定ではこのオール愛知のきもの関連団体の下地があって、ここに呼びかけることで有機的に動き出したということですね。それに、私も所属しています愛知の中小企業団体中央会に働きかけて、ここがネットワーク役の中心となり、情報のキーポイントとしては愛知の教育委員会などが機能したことも大きかったですね」

既存のきもの関連組織がフル機能したことが特長だったようですね。

「そうですね。それも昨日今日に始まった組織ではなく、和装教育だけとってみても、高校の被服科の先生方への働きかけは十数年以上続けていますし、中学校でのゆかたづくりの応援は7、8年来のものです。小学校の運針授業でもボランティアで長く続けています。こうしてコツコツと続けてきた組織の土台があるから検定試験にも対応できたといえます」

今回の検定試験も和装教育の延長上に位置づけられるべきですね。

「本当にそう思います。小学校へ運針の授業へ行きますが、我々の子供時代は針を持たなくても、親姉妹の見様見まねで、基本はのみ込めていましたが、今の子供はまるで外国人。ぎょっとする光景を目の当たりにします。ことは、運針だけにとどまらず、ものづくり立国・日本の将来にもかかわることだと思いますね。身の回りの身近なことから手を動かす、このことの大事さは協調してしすぎることはないと思います」「中学の教科書にも、ここ20年間ほどは和装に関する記述は全く消えていたんです。教科書に載らないんですから、学校できものに関することを教わることもなかったのです。そしていま、大学の被服に関するオーソリティもなくなっています。きものに関する文化や知識は教育現場からどんどん姿を消そうとしている、これも現実です。和裁の教育も、以前は女性の必須実務教育の柱と位置づけられていましたが、いまではカルチャーとなっています」
「ところが、中学や高校で和裁教育をやらせていくと、不登校の子供が参加してきて、これがきっかけで授業を受けるようになったとか、ある日、茶髪の子が黒髪に染め直して登校してくるなど、先生方は涙を流して報告されています。手を動かしたり、ものをつくる喜びを教えていくことが知識詰め込み教育を是正し、教育の現場の荒廃を正す一助になる可能性があります。きものが受け継いだ文化の内容にはそのような奥深いものが秘められています」

きもの文化検定も今年は2回目となりますが、今回の成功から改めて感じられたことはありますか。

「和裁の検定試験は昭和45年から国家検定制度がなっていますが、業界でスタートしたのは昭和29年からです。最初からなら60年以上の歴史があります。和裁人口の多かった昭和50年までは全国で数十万人の受験者数でした。現在減ってきたとはいえ、数万単位の受験生がいます。きもの文化検定も今回は6,722人の受験者でしたが、これを全国に広げる体制さえ整備すれば、たちまち和裁の検定者数には達すると思います。ただ、両方の検定の整合性を考える必要性も強くなってくると思いますが、まだまだ、マンネリを心配することはありません。和裁検定の場合もそうですが、どこまでいっても、われわれは受験者の"熱意"に励まされるということですが、ただ、"慣れ"で進めることは気をつけなくてはならない点でしょうね。」

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