リレーインタビュー

第十二回
【初の着付けDVD制作、メルマガも大ヒット】
青山きもの学院 吉田 英一郎さん
<(社)全日本きもの振興会正会員>

メールマガジン(無料配信)まぐまぐの「スクール・おけいこ部門」で、連続20週でアクセス数ナンバーワンのきものサイトがあるのをご存知でしょうか。それは「青山きもの学院の着物着付け、帯結びDVD制作記」です。制作記の元になっているのは、同学院が昨年10月に発売した初のきもの着付けDVD「ひとりで学べる“着物の着方と帯結び”」。このDVD制作の裏話や吉田さんの奮闘記を中心にしたきものの情報発信が若い人の関心をゲットしたのです。

メルマガ「制作記」の人気はすごいですね。

「ちょっとこちらも驚いているところです。読者登録数は7,500名に上っています。当学院の在校生の数がその10分の1なのですから。もちろん、無料ということもありますが、きものの着付けは習いたいけれど、教室へは様々な事情で通えない、という“潜在層”が大変たくさんいらっしゃるということを痛感します。もともと、メルマガ創刊の目的は、ほとんど手づくりで着付けDVDを制作するという無謀な試みを始めたことからです。制作には大変な苦労が予測されました。それでも、着付けのノウハウをきものビギナーでもわかるような内容でビジュアルに伝えたい、という思いは強くあって、予想される困難な作業に自分自身の気持ちが負けないようにと、自分を鼓舞する形で週1回日記風に書き始めたというのが本当のところなのです。きもの着付けのDVDはまだどこにもありませんし、それを制作するとなるとすべて手探りの作業です。とにかく本邦初へのチャレンジに対する制作裏話が思わぬ反響を得て、何十週にも亘って部門トップになったのは驚きであり、心強いことです」

着付けのDVDはいわば在宅での着付け講習です。教室に通う人への影響などはありませんか。

「それはないと思います。本来、きもの着付け教室のあるべき姿は、着付け方法を標準化して、それを全国に伝えるというところにあります。教室へ通ってくださるコアな生徒さんとは別に、その周辺には習いたいけれど通えない、あるいは着付けを過去に習ったのだけれど、忘れてしまったなどの人が数十倍の規模でいらっしゃる。これまでは着付けのノウハウ本などがその間隙を埋めていたのですが、出版するに見合う想定読者数などで簡単には出せない状況です。また、最近の若い人へ伝えるメディアとして書籍以外の方法も有効ではないのか。そんなことを強く思うようになって、教室を真ん中にした新しいネットワークの方法としてDVDの発売に踏み切ったのです」

DVD(1巻3990円)発売以降の状況は如何ですか。

「実は初回の制作分をすべて買取るという話もありました。しかし、ビジネスとしてだけのDVDの発売ではありませんでしたから、お断りして、時間は掛かっても着実に届く方法で捌いています。メルマガ効果などもあって、売れ行きは順調です。制作運営を40代前半のスタッフで、やる気横溢で取り組んでいますから、この熱気がこれから様々な形で伝わり、広がっていくものと考えています。今後、DVDはきものの着付けノウハウだけに終わらず、きものや着付けの周辺の課題、つまり日本の文化全般の紹介にすすめていきたい、と夢を追っています。夢と金(ビジネス)のどちらを取るか、と問われれば、いまは夢を取ります」

その夢の部分の一端を教えてくれますか。

「きものを着るということは、きものに込められた様々なこと、例えば、紋様一つでも意味を持っていますし、日本の四季の移ろいやそのことを表した和歌や絵画などと影響しあっています。着付けも、わが国文化の中に仕舞い込まれた作法などへの深い理解が必要です。着付けDVDが着付けノウハウだけで終わらないというのも、そういう奥深い問題が横たわっているからで、広い問題意識の紹介こそ、今の若者の関心に答える道だと思います。さらには、能・狂言など伝統芸能、そして伝統工芸の紹介もDVD化したい。狂言でも、演者が舞台を一回りすることで世界が変わるという“決まりごと”の中で舞台と観客がつながっています。初歩的なことからだんだんと奥深い世界へと誘って、広く日本文化の振興にも役立つようなものとしてのDVD制作を考えています」

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