リレーインタビュー

第七回
【着てもらってこそきもの。楽しく着る着かた教室を】
パ-ルトーン 社長 國松 照朗さん
<(社)全日本きもの振興会特別賛助会員>

きもの振興活動を実践する業界人ナンバーワンに推して差し障りのないのがこの人。「もっときものを着やすくする環境を作りましょう、などと話すと“商売がらみ”だろうと曲解されることも多かった」というように、素直に聞いて貰えなかったこともあったが、そんなことに忖度していられるような時じゃない、いまこそきものにまつわる“垣根”を低くして、もっと着やすくする運動を強めるべきだ、と強調する。國松さんのきもの振興論に耳を傾けてみよう。

先頃開かれた呉服専門店の全国大会の挨拶でも述べたのですが、いま、お店に問われているのは、業者の側に立つのですか、それとも消費者の側に立つのですか、という二者択一です。結論は消費者の立場に立って発言しないと、消費者はどんどんきものから離れていくということです。いま、きものが売れないといいますが、これは商品が悪い、企画が悪い、というのは業者側に立った発想で、消費者サイドとしてはただ「着ないから要らない、要らないから買わない」になっただけで、だから売れなくなってしまったのです。
ある専門店の方に、「MKタクシーでも“きもの割引”をしているのですから、貴店もきもので来店して下さったお客さんに何かサービスをしてあげてはいかがですか?」と提案したところ「当店のお客様の内70~80%の方は一人できものが着られないのですよ」という答えが返ってきました。これでは免許を持たない人にクルマを売ってきたようなものです。これが業界の実態ではなかったでしょうか。幸いクルマと違ってきものは免許がいりませんから、売る側が教える側になって着方の普及をすればいいのではないですか。そして、着る楽しみを十分味わっていただいてきものにはまってもらえれば最高です。
そのためにはまず、自分がきものにはまらないといけないですね。ゴルフだって、飛ばないのにドライバーを買い換えたり、雨の日にも早起きして行くではありませんか。仕事のためにきものを着るのではなく、きものを着る楽しみ方を自らが知らなくては人に教えることは出来ません。私も日常からきもので通していますから、何枚もきものを持っています。しかし、これをすべてきもの専門店で買っていたらいまごろ財産をなくして、路頭に迷うことになりかねません。そのためにはやはり安く売ってください。せめて身内に売る価格でなら一般の消費者の財布も開いてもらえます。



仙台のある専門店でこのような話しをしたところ、「全くその通り、私どもの店では、話されたようにやってきました」と言われて、店を案内してもらいました。その店では、店のあちこちでお客さんが寛いだ雰囲気で楽しそうに着方を習っておられます。店がきものサロンになっているのですね。

今度、増築されたのですが、広がったスペースは売場になるのではなく、喫茶室などを備えたサロンになっていました。その中で、きものを着てアルバムを開きながら楽しげに皆に見せている人がいました。てっきり店の人と思っていたら、お客さんでした。この店のように消費者を味方につけることが大事で、消費者を敵にしてしまっていることってなかったでしょうか。少なくとも、消費者を味方につけている店は間違いなく繁盛しています。



例えば、作家さんが物を作るとき「いいものを作れば良い、売ることは小売屋さんに任せれば」という姿勢ではこの時代、通用しません。いいものとは、楽しんで、安心して、着られるものを作っていくべきで、そのことをモノづくりの最初から考えて作らないといいものを作っているとは言えません。同じように、買ってもらうだけで、着てもらわなくても良いという売り方も通用しません。いま私は、きものを楽しく着るために「きものの着かた教室」を提案しています。そこで自分流の楽な着かたを教われば、きものへの興味は飛躍的に増すのではないでしょうか。まず、着てもらうことから全てが始まります。そのために各小売店さんが「着かた教室」を実施されることを心より願っています。このことは、例えばお風呂の入り方とお風呂への入れ方はずいぶん違います。お風呂に入るのは習う必要もありませんが、入れ方は介護者などで技術が要ります。きものも着方と着せ方はこれと同じように違いがあります。しかし、きものを日常着ていれば、同じくらいに簡単になります。まず、着用することからきもの振興の全てが始まります。そのために、自分流の着かたを楽しく習う機会を作りたいと思うのです。

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