
| 第一回 【きものライフただいま満喫中】 (社)全日本きもの振興会々長 房本 清次さん |
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ふだんにきものを着る人はさすがに少なくなったとはいえ、折々にきものをさりげなく着こなす人は少なくありません.無理なく、いきいきときものライフを楽しんでおられる人たち。その人たちのきものにまつわる様々な話にちょっと耳を傾けませんか。きもので暮らす豊かさが伝わってくるようです。題して「私ときもの」。リレーインタビューのトップバッターでご登場いただくのは、全日本きもの振興会の会長で、室町呉服卸「近江屋」会長の房本清次さんです。
着慣れると苦にならないきもの着用受けるサービス数知れずきもの商いつくづく幸せ
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きものとの付き合いはどれほどですか。
会社は今年で創業60周年を迎えましたが、創業直後に会社に入っていますから、私自身きものを職業として約60年。それ以来きものと離れた事がありません。商品としてのきものとは別に、私自身のきもの着用の履歴といいますと、子供の頃から着てはいましたが、意織的に着出したのはやはり、20歳前後の頃の「ゆかた」からでしょうか。当時盆踊りで、仮装ゆかた祭りというのがあって、女の人のゆかたを借り出して、汗一杯かいて返すときに嫌がられた記憶がありますよ。
結婚式はもちろん、羽織袴の正装で挙げましたが、お祝いにお召しや紬のきものをもらいました.正月など改まったときにはこれらも着ましたが、日常的に着たのは、なんと言っても当時流行っていたウールのきものです。これだと横になってもシワなど気にすることもないし、麻雀のときなど実に重宝しました。だから、家に帰るともっぱらきもので、きものに着替えると気持がゆったりする。これは当時からの変わらない実感ですね。
お世辞じやないのですが、房本さんのきもの姿は、なんだか、ゆとりがあって、ぴったり納まっているとかねがね思っていたのですが。
ありがとうご座います。家内もそう言ってくれます.とにかく、帯などもきつくは締めずに、ゆったりと、自分流に着ています。きものを着ていく日は手帳に「き」と書き込んでいます。多い月で10回、少ないときでも6,7回あるでしょうか。着続けていると着る方も、接する方も馴染んでくるのではないで
しょうか。
着ていくのは気の張る場所ばかりではありません。気楽な食事会とか、狂言の練習日とかも着ていくときがあります。とにかく、一年を通して、きものを着ています。きものは夏は意外に涼しいんです。袖口が開いていて風通しがいい。逆に冬は暖かい。下はスパッツを穿いて、後はきものがすっぽりと体を包み込んでくれますから。
奥さんもきものをご愛用ですか。
はい。結婚するとき、「一生、きものだけは欲しいものを作ってやる」と約束しましたから。ソロプチストの会長を引き受けるかどうか相談しに来たときも、「会合にはきものを着ていくこと」が私の出した条件でした。そんなことを言うまでもなく、家内はきもの好きで、きものを着ることが多いですね。ただ、着る機会が多いだけに、簡単に着られる工夫もいると思うのです。なんと言っても着付けの最大の問題は帯です。年をとると、後に手を回すことが出来にくくなる。だから、わが社で採用している「らくらく帯」(簡易仕立て帯)を使っています。どんな袋帯でもこれに仕立て直して、着付けしています。このお陰で随分楽に着付けができます。 わが社の商品部にも常々「着る立場で商品開発をして欲しい」と言っているのですが、特に帯に関しては、どんな方法でも簡単に着られる帯結びを工夫すべきでしょうね
残念ながら街できもの姿をみかけなくなっていますが。
それだけに、きもの姿をみかけるとほっとしますよ。うれしいし、正直有難い、と思いますね。雨できものを着ておられたりすると、タクシー呼んであげて傘を持ってあげよう、と思いますものね(笑)。反対に、業界人に多いのですが、他人のきもの姿を批判する人がいる。あれはやめないと、ね。きものが習慣になると、着ていくのがちっとも苦になりませんよ。私はゴルフ場に行くときもクルマにきものを積み込んで行くことがしばしばです。プレーを終わって、汗を流してきものに着替えて次の会合に出る、などはわけないことです。フィットネスクラブにもきもので行くことが多いですよ。
きものの効用といったことを感じられることはありますか。
これはもう、言い出したらきりが無いほど多いですね。とにかく、きもの姿だと受けるサービスが桁違いにいい。仕事で新幹線に乗ることが多いのですが、袴を降りる前につけます。そうすると周りの目が違ってくる。乗務員らも特別扱いしてくれる。福岡へは飛行機で行きますが、きものだからスチュワーデスさんも気を使っていい席へ案内してくれます。これが海外になると、ますます、特別扱いですよ。オペラやミュージカルが好きでパリ、ミラノ、ウイーン、シドニ←、ニューヨークなどの名舞台を家内と一緒に観劇しましたが、夫婦できものですから、もうあちこちから“ワンダフル”の声が掛かります。ウイーンでオペラを見に行ったときには、わざわざモーツアルトの日本語版解説書を持ってきてくれましたね。これが洋服だとどうでしょう。いくら正装していっても、こうはいきませんよね。きものの効用、ここに極まれりといったところです。
半面、きものを着て来ればよかったと、ホゾをかんだこともあります。ある時雨だし、洋服でと思って行ったのですが「今日はきものじやないのですか」と言われて、返す言葉がなかった。雨だったもので、という言い訳を言うのが嫌いですから。
きものを着る機会づくり、ということで業界でもいろいろな企画を試みていますが・・・。
とにかく、業者がきものを着て集まるということだけではなく、もっともっと、一般の人がきものを着て集って欲しいですね。気軽に、気楽に集ってもらうように心がけているつもりですが。そして、こうした場ではきものを着ることや着方を楽しんでもらう。だから、最近のミニゆかたなどでもとかくあれはきものじやない、などの声もありますが、ファッションとしてのきものにはいろいろあっていい、と私は思うのです。
会社でも、若い社員にきものを着てもらおうと、売り出しのときなどは着る人を決めてきものを着ることにしていますが、みんな内心では、きもの着用者に指名して欲しい、と思っているようです。正月の初出勤も全員きもの姿ですが、みんな自発的に楽しんできものを着ていまよ。
振り返ってみると、きものを抜きに私の人生は考えられないし、きものとこれだけ深くつき合わせてもらえたことはつくづく幸せなことだし、誇りでもあります。